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トリアージ(患者選別)とは?

どの人から搬送するか、治療をしていくかを見きわめます

 大地震や広域で起きた大災害では、一度に多数のケガ人が出ます。その場合、災害現場だけでなく搬送時も、また病院や救護所でも、ケガ人があふれ大混乱です。
 そのようなときに、あなたがケガをしていても、すぐにお医者さんに診てもらえるとは限りません。それぞれの場所で、ケガの具合をみてくれる人や治療、搬送をしてくれる人員は限られていますし、運良く病院にたどりつけたとしても、病院も被災してレントゲンが壊れたり、停電していたり、水や酸素が使えなかったりと物理的な被害を受けている可能性があるためです。特に大地震のときには、広域で数多くの病院が同時に被災している可能性が高いため、病院にいた入院患者をはじめ、治療・搬送にも大きな影響がでてきます。
 このような状況下では、病院や救護所では、やむを得ず、最善の医療をより多くの傷病者に施すために救命の見込みのない重症者、治療不要の軽症者を除外していく必要がでてきます。これが、トリアージ(トリアージは、もともと、フランス語のtrier(選り分ける、分別する)の名詞形で、収穫されたコーヒー豆やぶどうを選別する際に使われたのがその由来といわれています)です。災害時には、「身体的な面からは、生命は四肢に優先し、四肢は機能に優先し、機能は美容に優先」します。
  下表は、ニューヨーク州の災害対策マニュアル(一部改変)です。診断はあくまで例ですが、呼吸、循環、意識レベル、血圧といったバイタルサインのほか、受傷状況(解剖学的な部位、外傷の機序、事故の様子)、年齢、合併症、予後などを総合的にみながら、下表のように大きく4つに分類され、トリアージタグ(右写真)がつけられます。 それをもとに、災害の規模や種類、傷病者・重症者の数と医療機関・スタッフのキャパシティとのバランスを勘案しながら、その場、その場での治療・搬送の優先順位が決められていきます。

トリアージ・タッグ

トリア−ジのプロトコール
(New York State Department of Health,MCI Manualを一部改変)

優先度
分 類
区分
識別
疾病状況 / 診 断
第1順位
緊急治療群
重 症
I
 生命、四肢の危機的状態で、直ちに処置の必要なもの
 気道閉塞または呼吸困難、重症熱傷、心外傷、大出血または止血困難、開放性胸部外傷、ショック
第2順位
準緊急治療群
中等症
II
 2〜3時間処置を遅らせても悪化しない程度のもの
  熱傷、多発または大骨折、脊髄損傷、合併症のない頭部外傷
第3順位
軽症群
軽 症
III
 軽度外傷、通院加療が可能程度のもの
 小骨折、外傷、小範囲の熱傷(体表面積の10%以内)で気道熱傷を含まないもの、精神症状を呈するもの
第4順位
死亡群
死亡・救命不可
0
 生命徴候のないもの
 
死亡または明らかに生存の可能性のないもの

「災害時の地域保険医療活動」より引用/監修:厚生省健康政策局計画課、厚生省健康政策局指導課 

 トリア−ジは、あらゆる場面でくり返し行われます。これは、刻々と変化する傷病者の容態に適切に対応することや、災害現場で行われる第一次トリア−ジをもう一度見直すといった役割も担います。

◆ トリア−ジ現場は、患者・家族にとっても、医療スタッフにとっても、非情で過酷です
 阪神・淡路大震災の医療現場は、さまざまな理由から大変、厳しい現場であったということが伝えられています。重症の傷病者と軽症者が一斉に押し寄せ、物理的にも、精神的にも大変悲惨で、かつ過酷な状況であったことに加え、 突然の地震で死を受け入れられない家族も多かったからです。
 たとえば、医師は少なくとも20分以上、心肺停止状態が続いた患者に対して、心肺蘇生の可能性が極めて低いことを感じながらも、懸命に心マッサージを施しているとします。そこには、心配そうな家族と、次々押し寄せる重症の傷病者たち。傷病者たちは、応急処置を待っています。医師は、やむなくその患者の蘇生を止め、より救命率の高い患者の処置に移るといった判断をせざるをえませんでした。でも、家族は、納得できません。医師によって突然、下される決断を、家族はすぐに受け入れることはできません。「さっきまで生きていたんだ」「まだ生温かい」「もっと治療を続けてくれ」などと訴えます。確かに平時なら、仮に救命の確率が非常に低いケースでも、医師は十分に時間をかけてさまざまな処置を行い、加えて丁寧に説明をして、この過酷な状況を家族が納得し、受け入れられることができるように配慮をすることができます。しかし、阪神・淡路大震災で直面したように、広域の大災害時となれば、限られた医療スタッフで、次々に運ばれる重症者の診断・処置に追われます。こういった家族にも医療スタッフにも辛い現実が必ず起こります。

 このように、大災害時には、ご自分やご家族が軽いケガ、重いケガに限らず、どこにおいても満足のいく治療が受けられない可能性が高い、ということを知っておきましょう。
 そのなかに巻き込まれないようにするには、ふだんから、ケガをしないよう(死なないよう)に工夫をしておくこと。ケガをしなければ、このような事態に遭遇することはありません。自宅の家具の固定や配置換え、家の耐震補強を積極的にしてください。
 そして、それほど大きくないケガであれば、自分たちで手当てできるように消防署などの講習を受けて身につけることも大切です。また、近所の個人病院でみてもらえるように、地域で相談・調整をしておくことをおすすめします。

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