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大量の水を必要とする透析

 透析には、大きくわけると血液透析と腹腔透析の2つの治療方法があります。
 血液透析を利用している方のほうが多く、治療の際には大量の水が必要となります。週に3回、4〜5時間/回の透析が必要とされ、1回に必要な水は120リットル。2リットル入りペットボトルが60本分になります。その他に透析前の洗浄や透析液の濃度調整、透析後の洗浄、消毒などにも大量の水を使います。
 仮に大地震がきて、断水、停電となり、いつも治療を受けている病院に水、電気のバックアップシステムがなければ、透析をすることができません。透析をしている病院施設では、自家発電や水の備蓄、自家式浄水供給システムなどを備えるところもありますが、災害時に病院がどのような被害を受けるかもわかりません。阪神・淡路大震災でも、多くの病院施設が水の調達に苦慮したり、一部では透析できない状態におちいり、多くの透析患者がさまよったとともいわれています。
 そのような教訓もあってか、新潟県中越地震では、地元医師の連携と非常用設備が役にたった例もみられました。自家発電機とともに非常用井戸が大量のろ過した水を供給し透析を可能にしたというものです。

 過去の大きな地震災害では、水道の復旧には時間がかかっています(阪神・淡路大震災で全戸通水に3ヶ月)。いつも治療を受けている病院が被害を受けていたり、電気や水道のバックアップシステムをもっていない場合には、近隣の被害を受けていない地域の病院で治療を受けるという選択をしたほうが得策ともいえます。こういった事態が起きることを想定して、次のようなことをふだんから用意したり病院と相談したりしておきましょう。
 なお、腹膜透析は、患者の適性にもよるためか利用が少ないのですが、一般に災害に強いと言われていて、電気、水道が止まっても医療機関から手で注入できるタイプの透析液の提供を受けたり、患者の自宅にある殺菌装置の充電できる場所があれば、腹膜透析を再開することができる利点があるとされてきました。新潟県中越地震でもこの利点は、確認されました。

(参 考)

 倒壊した建物に長い時間、下敷きになって救出された傷病者(挫滅症候群またはクラッシュシンドロームという)も、圧迫から開放されたその瞬間から毒素がまわり始めます。助け出された傷病者は、一見、元気そうに見えますが、透析や輸液などの治療をほどこすために一刻も早く病院に運ぶ必要があります。被災していない全身管理が可能な病院に、急いで移送(ヘリなど)することが望まれます。透析医療を行う病院で治療は可能ですが、全身管理が必要なことに加え、その患者を受け入れることで通常時の透析患者がはじかれる可能性もあるので、自治体それぞれの事情に則してきちんと方針のすり合わせをしておく必要があります。

大地震では、断水、停電、さらに、
医療機器の損傷等により、
透析が不可能に!

 透析を必要とする患者にとって、
透析が出来ないことは、死に直結します。

透析ができない可能性があります

 

透析ってなあに?

 腎臓は、ふだん、体のなかの老廃物を尿として外に出したり、体内の水分や電解質を調節したりする重要な役割を担っています。糖尿病や高血圧など、さまざまな原因から腎臓の機能が落ちてくると、体のなかに毒素がたまり、全身に深刻なダメージをもたらします。
 透析患者の9割にも及ぶ方*が治療として受けている血液透析は、血液を体の外に出して、人工腎臓(ダイアライザー)を通し、水分や尿毒素を除去し、きれいになった血液を体に返してあげる治療です。患者の多くは血液透析を行っていて、治療時間は週3回(1回につき4〜5時間)を要します。腎臓病患者が透析が行えないということは、死を意味します。

* 日本透析医学会の「図説慢性透析療法の現況」によると、慢性透析患者の治療形態は、血液透析がアンケート回答者全体の95%超(2003年12月31日現在)にもおよんでいます。

 上記の事態をふまえて、次に大地震で起こりうる事態と、情報伝達等について、考えられる対策をあげておきます(ここでは、水を大量に使う透析患者にスポットがあたっていますが、常にケアが必要な専門科をもつ病院や難病を抱える方に応用がききます。ご参考になさってください。)

(大地震で起こりうる事態)
 患者が、ふだん透析を受けている医療機関(以下、病院という)に行きたいと思っても、

  • 交通機関(電車、バス等)が動かなくて行けない。道路も普通車両は通行止に。
  • 電話が通じなくて、病院が大丈夫かどうか、確認できない。
  • なんとか病院に来てみたが、実は病院が透析できる状態になかった
    (停電、断水、医療機器が破損、建物自体が被災し中に入れない、医者やスタッフが被災して来ていない)
  • 透析は4〜5時間と長いので、治療中に突然、大きな揺れが来て、機器等が倒れたり、電気、水の供給が止まる。

 阪神・淡路大震災では、多くの患者がこのような場面に遭遇し、とても心細い状態に置かれました。
 このようなことから、関係している機関、患者等には、より一層、全国的に事前対策・対応等を練っておく必要があります。

 以下に、関係機関において、考えつく対応を記しておきます。さらに現場の皆さまからのご提案等がありましたら、メールででもお寄せいただければ、改良を加えていきたいと思います。

(透析医療機関(以下、病院とする))

  1. 大災害時の病院マニュアルを作成し、病院内外の関連機関、患者に周知します。
  2. 大災害時に、被災地外だった場合、患者を受け入れる場合のネットワークや指針を作っておきます。(慢性患者以外に、クラッシュシンドロームといった全身管理が必要な症状に対応できるかどうか等も含みます)
  3. 関係機関* 、通院患者と話し合い、近隣の患者間の小さなネットワークを作ったり、被災地外に患者を搬送する方法等を確立するなど、ふだんから備えておきます。
    * 関連機関:協力できる他の透析施設、自治体、水・電力関連会社、医薬品・機器類の会社・メンテナンス会社等
  4. 防災訓練などを経て、マニュアルを、より実行性の高いものとしましょう。
  5. あらゆる連絡手段の確保と入念なルール作りをしておきます(HP、メールとともに、それに頼らない通信手段等、複数の通信手段の確保)。
    :一番、身近で簡単、患者も利用できるものとしては、病院内の公衆電話(緑、グレー色。公衆電話は、災害時にふつうの電話よりつながりやすくなっています)。その番号リストを作成し関係機関、患者と共有する。できれば最低2台確保し、1台は受ける専用(この番号を関係機関内で共有する)、1台はかける専用に。また、災害伝言ダイヤル171の積極的利用を考える。どの電話番号に、被災状況や連絡事項を病院が入れておく、と決めておけば、患者に、少なくともその病院が被災しているか否か、どうすればいいかという指針だけでも伝えられるはずです。)
    その他、余裕があれば、衛星電話や、比較的、大きな病院であれば、災害時優先電話の指定を受けるほか、可能であれば自治体の防災行政無線などの導入も考えられます。

(病院−病院間)

  1. 透析医療を行っている病院のネットワーク化、被害・受け入れ状況の情報共有(すでに県単位、地域単位で、着手が始まっていて、情報伝達訓練も行われています)
    日本透析医会(各地とのリンクもあり)「災害情報ネットワーク 災害時情報伝達・集計専用ページ」:       
       http://www.saigai-touseki.net/
       http://www4.osk.3web.ne.jp/~touseki/(副本部/大阪)
  2. あらゆる連絡手段の確保(上記を参考のこと)を。病院間のリストとしては、置いてある公衆電話番号や171に利用する電話番号(病院−患者間とは別の番号に)のほか、非常時のバックアップシステム(電気、水)の有無等、施設規模(患者を受け入れるキャパシティー)などもリスト化し、共有しておくとよいと思います。

(病院−自治体−水、電力関連会社−医薬品、機材類のメンテナンス会社等の業者間)

  1. 自治体、特に防災関係部局では、そこに透析患者がどれくらいいらっしゃるかを把握できてきません。そのため、地域防災計画にも反映できていない、という面があります。ぜひ、病院としても患者としても、自治体との連携をお願いしたいと思います。
  2. 災害時、透析施設には、自治体は特に水、電気を優先して手配する必要がありますが、小さな診療所を自治体は把握しきれていない場合がありますので、すべての医療機関は、その関係業者とともに自治体に届けておくことをおすすめします。自治体も、さまざまなバックデータとともに、医療機関のリストをそろえ、防災部局と情報を共有しておく必要があります。
  3. 道路は交通止め、バス、電車などの交通機関が動かない場合でも、被災地外の病院に患者を移送する必要がでてきます。通行の許可を得た緊急車両を利用して患者を被災地外などに搬送するとき、自治体との許可・情報共有が必須ですから、日頃から相互に話し合いをしたり、さまざまな連絡方法等を確立しておくことが必要です。
  4. 自家発電装置があっても、何日も蓄えることはできませんし、透析機械のバッテリーも充電、交換が必要です。優先的に届けてもらうためには、上記3と同じように交通許可証をもらう必要もあり、日頃から自治体、関連会社と輸送等を含め話し合って書面等で約束をしておく必要もあります。もちろん、医薬品も同様です。 

(病院−患者間)

  1. 患者は、災害時の病院の透析マニュアル等(病院作成のもの、自治体発行のもの等)を見ていざというときの連絡方法(自分の状況を報告し、病院の被災状況に応じた指示を受ける)や、施設の避難場所、透析中の緊急離脱方法などについて、病院と相談・設定しておきましょう。
  2. 大きな地震のときには、1〜2週間、被災地の外に出ることもあるので、病院独自がもっている協力病院や勤務先近辺の病院に加えて、遠方で一時的に身を寄せられる親戚・友人がいらっしゃれば、その近辺の病院をピックアップしておきましょう。家族にもきちんと伝えて連絡方法(171など)の確認もしておきましょう。
  3. いつもと違う病院でもきちんと治療が受けられるように、病院が承認している「災害時透析患者カード」などを常に携帯しましょう(家族にも、同じものを渡しておく)。さらに、できれば、透析方法やデータ、内服薬は覚えておきましょう(いつも飲んでいる薬が変わらないものなら、主治医と相談のうえ、2週間分くらいストックして、順次、新しいものと入れ替えましょう。)
  4. 数日間、透析を受けることができないことも考えて、食事制限の方法をきちんと理解しておきましょう。(「食事と水分」を上手に管理すれば、数日間、日常生活をすることも可能な場合もあります。カロリー確保と、カリウム、たんぱく質、塩分を控え、水分量(食物中を含む)は300〜400mlにするなど、知っておくことが大切。上記の東京都の手引には、避難所などで配られるであろう食料のカリウム含有量等の一覧表がのっているので、参照のこと。)
  5. 避難することになったら、避難先できちんと「透析を受けていて、2、3日うちに病院を探す必要がある」等を伝え、そういう避難者がいることを、早めに自治体に伝えてもらいましょう。

 以下、参考資料として、東京都が出しているマニュアルをご紹介しておきます。
  ○ 東京都福祉保健局保健政策部疾病課
     「災害時における透析医療活動マニュアル」(平成18年3月改定版) 
     「透析患者用防災の手引き−災害時にどう行動するか」(マニュアルの抜粋)

(患者−患者間)

  1. 同じ病院の患者どうし(できれば、自宅が歩いていける距離が望ましい)で、小規模なグループ(ネットワーク)を作っておきましょう。病院への連絡は、まとめて代表者が行ったり、被災地外への搬送などには、こういったネットワークがあると情報が途切れる心配がなく、便利です。安否の確認や、不安解消にも役立ちます。
  2. 避難所などで支給される食事は、身体に合わないものもあります。数人で一緒に条件にあう日持ちするものを備蓄しておくなど、助け合える体制をつくっておきましょう。

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