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病院が被災すると? - 阪神・淡路大震災の例

 過去の大きな地震災害では、医療機関において、さまざまな混乱が起きました。その教訓を受け、国や自治体、医療機関、患者団体等により、さまざまな取り組みやネットワーク化がなされてきています。とはいえ、災害はいつも想定を超えた事態をもたらすということもあって、まだまだ万全とはいえません。
 たとえば、2005年3月に福岡県沖で起きた地震では、多くの病院でエレベータが停止しました。これにより、同じ病院内でありながら集中治療室や救命救急センター、ヘリポートそして地上が一時的とはいえ分断され、階段で傷病者等を運ばなくてはなりませんでした。さらに携帯の優先電話も不通になった地域がありました。
 その他にも地震が起きる季節によっては、深刻な感染症の問題等も出てきますし、医療用ガスがきちんと供給されるかも心配です。このようなことから一病院のことではなく、地域一体となった取り組みが必要となります。

 下記は、阪神・淡路大震災でみられた被災地域の病院が見舞れた被災事例の一部です。ひとたび大地震がくれば、病院の規模に関わらず、どの病院でも同じようなことが起きる可能性があります。一般の方も救急病院や災害拠点病院に指定されていない中小規模の病院も、入院施設をもたない個人病院も、できるだけ様々な被害を想定して対策を練っておくことが望まれます。

  1. 兵庫県下では4病院、101診療所が全壊または焼失。阪神地域では、多くの医療機関が建物被害を受けた。
  2. 建物被害が小さくても、水道、電気、ガス、電話などライフラインの寸断のため、機能が低下した。
  3. 断水。阪神・淡路地域の22病院のうち断水しなかったのは2病院。ほとんどが水の調達に苦慮した。(特に透析用の水の確保が難しく、震災直後、阪神・神戸地域の透析施設45カ所のうち21施設が機能不能となり、兵庫県内全体で約3000人の患者に影響が出たともいわれている。)
      大量の水を必要とする透析 >>
     断水によって、医療用水のほか、ボイラー用水やコンプレッサー・自家発電装置(潤滑油の冷却水の不足)やコンピュータ用の空調機の停止(病院予約システム、入院患者管理システム、会計システム、検査・処方・給食オーダリング・システムの停止をもたらす)、歯科、整形外科、脳外科などの水冷式モーターで動く圧縮空気を必要とする人工呼吸器や医療機器の使用不能、蒸気を必要とする消毒装置や乾燥機の使用不能、暖房や給湯の停止、各種の臨床検査や放射線検査の制限、手術や血液透析などの治療行為の制限など、断水の影響は、多岐におよび、とても深刻です。
     さらには、水洗トイレなどに使用する雑排水の停止は病院の衛生環境を極端に悪化させ、空調や暖房の停止とともに病院内の住環境を著しく低下させた。水がないため手術室の空調保温が行われず、冬に手術中の患者の保温ができない、手術使用後の器材の洗浄・消毒ができない、X線撮影装置の自動現像器の洗浄ができずに使用不能に。
     給水設備は、屋上にある飲用高置水槽と配管の破損、雑用高置水槽に亀裂が生じ、漏水に。病棟や電気設備などが直接、断水の被害を被っただけでなく、高置水槽への自動給水装置が作動し、地上の受水槽の貯留水をも失うことになった。
  4. 停電。(わずかな明かりを頼りに診察・治療(窓明かりや懐中電灯、非常灯が頼り)、配線の断線により自家発電装置が作動せず、(水冷型圧縮空気源装置で作動する人工呼吸器は断水で停止(院内の圧縮空気源装置内蔵型麻酔器、人工呼吸器に換え、残りは外部からの空冷移動型圧縮空気装置を借用。その間、現場の医師や看護婦、そして付添の家族が交替でアンビューバッグを動かし続けた。一番長い患者で59時間続け、一人の犠牲者も出さずに済んだ。)
  5. 大きな病院では、都市ガスの供給停止で、大型調理器具のほとんどが使用不可能になり、入院患者の食事提供に影響が出る。患者の食事情報を入れたコンピュータも利用できず。
  6. 高度な医療機器に多大な被害。心臓血管造影撮影装置、頭部血管造影撮影装置、磁気共鳴断層撮影装置(MRI)、リニアック装置、体腔治療器、血液細胞自動分析装置、人工透析装置、CTスキャン、単純X線装置などの高度医療機器が、転倒や移動で使用不能に。MRIやCTのずれ、天井走行式血管造影撮影機の脱落などもみられた。
  7. 医療スタッフの出勤状況は5〜6割。医療関係者の被災も多く、医療スタッフ不足の病院も。
  8. 救出現場など病院外でトリア−ジ(患者選別)がほとんど行われなかったため、医療機関には、死者や軽傷者、重症者などの患者が選別されずに殺到した。処置が終わっても家が危険で帰れないという人、けが人に付き添っている家族、負傷者を運んできた人も加わって、病院内は大混乱。
  9. 特定の病院にかたよって患者が集中。病院間の連絡等がとれなかったため、傷病者が殺到している病院のすぐ近くの病院が空いていた例もみられた。患者集中の理由として、市民自らが最寄りの救急病院に殺到したこと、救急隊員や消防団員が、市内の医療機関の受入状況を把握できず、直近への医療機関へ負傷者の搬送をくりかえしたこと、消防無線の輻輳(ふくそう)により2方向の通信が困難で、無線から流れてくる情報を聞いてほかの救急隊が搬送した受け入れ病院は受入れが可能なものと判断し、同じ医療機関に搬送した等、医療に関する情報提供が遅れた
  10. 患者の殺到した医療機関では医師等によって慣れないトリア−ジが行われた。また、トリア−ジの重要性はわかっても、被災者・遺族の前でそれを実行に移すことは難しい場面もみられた。
      トリア−ジ(患者選別)とは? >>
  11. 挫滅症候群(クラッシュシンドローム)は、救急医療関係者以外、その危険性が周知されていなかったことや、初期段階の全身症状が良い(受傷部位の外見の損傷が著しくないこと、意識が清明で自発呼吸がしっかりしていること)ことから見すごされがちで早期治療(透析等)が重要ということが、再認識された。
      大量の水を必要とする透析 >>
  12. 被害を受けた病院では、ライフラインの寸断等により、震災前からの入院患者を転院、退院させるなどの対応も必要だった。転院先は、人脈頼りとなった。
  13. 通院中の慢性疾患患者への当座の投薬と健在診療施設への紹介状の作成が主業務となった病院では、ホストコンピュータの損壊ならびにカルテ格納装置の倒壊により外来カルテの取り出しが不能となり、投薬・紹介状の作成に多大な障害をきたした。

 これ以外にも、被災地外の病院を含めた病院間の連係や、ボランティア医師の受入れ、患者の搬送の問題(ヘリコプター利用、通信の問題等を含む)などの多くの課題が突き付けられました。



 主な参考資料 : 「阪神・淡路大震災教訓情報資料集」 内閣府・(財)阪神・淡路大震災記念協会
 (一部編集)   「阪神・淡路大震災関連情報データベース」  総務省消防庁
          ※ 上記、資料に記載されている参考文献の一覧はこちらから >>

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